【レポート】第61回立命館大学日本文学会大会 

6月11日に行われた第61回立命館大学日本文学会大会は、無事盛会にて終えることができました。
ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

大会の様子の一部を、写真とともにご紹介します。

研究発表は、昨年度の卒業生、院生、海外からお招きした研究者による4本が行われました。時代やジャンル、国境をも横断しながら日本文学を考えていこうとする4名のご発表はとても示唆に富んだものでした。質疑応答も、学部生も含め活発に行われました。

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研究発表の後、木股知史先生が「画文共鳴あれこれ」という題でご講演くださいました。現在、デジタルアーカイブや雑誌の復刻版の発行など研究環境が飛躍的に向上しつつあります。しかし、木股先生は原本を直接手にとって、挿絵や出版手法などを想像していくことの重要性を指摘されました。挿絵や装幀といった点に留まらず、その本の持つ手触りや匂いなども想起させられたご講演でした。

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学会終了後は、末川記念会館地下のレストランカルムにて、懇親会が行われました。

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なお、会場にお越しくださった会員の方には『論究日本文学』最新号の106号をお渡ししました。
残念ながらお越しになれなかった方には、後日お送りいたします。今しばらくお待ちください。

第61回立命館大学日本文学会大会のお知らせ 

下記の通り、第61回立命館大学日本文学会大会を行います。
多数の方々の参加をお待ちしております。



■日時: 2017年6月11日(日) 13時00分~17時20分
■会場: 立命館大学衣笠キャンパス 以学館31教室
               
■内容
◇研究発表(13:00〜15:25)
① 空の名残がうつすもう一人の「兼好」
   ―第二十段から見る『徒然草』における慈円と西行の影響―
    庄司 真理 [本学卒業生]
② 書き変わる〈日本〉と〈東欧〉―横光利一のブダペスト体験―
    中井 祐希 [本学博士後期課程]
③ 『丹後国風土記』「浦嶼子」における「芳蘭」の考察
    砂田 和輝 [本学博士前期課程]
④ 近年のベトナムにおける文学研究(俳句を中心に)
    グエン・ニュー [客員研究員・ホーチミン社会科学人文大学]

◇講  演 (15:40~16:40)
   画文共鳴あれこれ
    木股 知史 [甲南大学文学部日本語日本文学科教授]

◇ 総  会 (16:50~17:20)
◆ 懇 親 会 (17:30~19:30)
 会場: レストランカルム
 会費: 5,000円(学部生・院生は3,000円)

第150回研究例会のお知らせ(2017年4月9日(日)13:00~) 

第150回研究例会を下記の日程にて開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

 日 時:4月9日(日)13:00~
 会 場:清心館 3階 533教室
 参加費:無 料

  ***** 題目・要旨 *****

河野裕子『森のやうに獣のやうに』論――連作「青林檎」に着目して――
 →(論題変更)河野裕子「青林檎」論――連作内における歌の編集意識
  立命館大学大学院博士課程前期課程  佐藤 好

 『森のやうに獣のやうに』(沖積社 一九七二・五)は、河野裕子の第一歌集である。この歌集に掲載された連作群は「裸足」・「夏」・「黙契」と分けられ、「青林檎」は、「裸足」の最後の連作に位置付けられている。そして、この連作の後に「夏」が始まり、連作「桜花の記憶」が掲載されているのである。この「青林檎」が歌集中においてどのような効果をもたらし、前後の連作に影響を与えているのかを分析、考察を試みたい。


「盗まれた手紙の話」論――〈欲望〉の構造をめぐって
 →(論題変更)坂口安吾「盗まれた手紙の話」小考
  立命館大学大学院博士課程後期課程  陳 暁芝

 「盗まれた手紙の話」は昭和15年6月1日発行の「文化評論」第1巻第1号に発表され、翌年『炉辺夜話集』に収録された坂口安吾の短編作である。
 本発表では、「盗まれた手紙の話」における〈欲望〉の構造に主眼を置き、物語に示される詐欺行為と深川オペラ劇場主人の敗北の内実を明らかにし、作品の成立を探る。その上、本作品ならびに「茶番に寄せて」を取り上げ、作者の創作意図を考察する。


林芙美子 『ボルネオダイヤ』論
 →(論題変更)林芙美子「ボルネオダイヤ」論―解放を望む女たち
  立命館大学大学院博士課程後期課程  フィトリアナ プスピタ デウィ

 林芙美子『ボルネオダイヤ』は1942年から1943年にかけての南方の体験から生まれた作品であり、戦後「改造」1946年6月号に発表された。作品は戦時中、インドネシアのボルネオ島に於ける日本女性の従軍慰安婦についての物語である。
 本発表は、主人公の人物像に注目し、内地と外地との生活を比較することにより、ボルネオ島での体験の意義を考察する。また、加えて、外地へ放浪した女性について作家の意図を明らかにするものである。


◆石川啄木「我等の一団と彼」の頃
  京都市立塔南高等学校常勤講師  深町 博史

 石川啄木は一九一〇(明治四三)年の五月末から六月上旬にかけて自身最後の小説となる「我等の一団と彼」を執筆した。「老人と青年の関係」を描いた前作「道」を「全然失敗してゐた」とし、本作の「目的」を「現代の主潮」としている。また、執筆期間中に発生した〈大逆事件〉にも重大な関心を寄せていく。本発表では「我等の一団と彼」を中心に、その「思想」上に大きな変化のあったという同時期の啄木文学についても考察したい。

 *例会終了後、16:30~ 評議員会を行います。

第149回研究例会のお知らせ(2016年12月11日(日)13:00~) 

第149回研究例会を下記の日程にて開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

 日 時:12月11日(日)13:00~
 会 場:清心館 3階 533教室
 参加費:無 料

  ***** 題目・要旨 *****

◆夢野久作「瓶詰地獄」論――読者を魅せる錯覚と「まごころ」の社会性
  立命館大学文学部日本文学専攻  畑中 千奈

 夢野久作「瓶詰地獄」(「瓶詰の地獄」として一九二八年に雑誌「猟奇」に掲載)は夢野の作品のなかでも屈指のミステリ作品として挙げられる。物語は書簡体小説の形をとり、三本の瓶に詰められた書面を遡ることによって無人島の兄妹の禁忌の全貌が暴かれていく。
 本発表では、『夢野久作の日記』(葦書房・一九七六年)などにも着目し、兄妹の意識の相違から浮かび上がる人間性と本文中の「まごころ」から見出される社会性を近代の個人の確立に対する夢野の思想と照らし合わせて考察したい。


中島敦『北方行』論への無限な探求
  →(論題変更)中島敦「北方行」論――三造と傳吉をめぐって
  立命館大学大学院博士課程後期課程  種 茗

 中島敦『北方行』は昭和九年から昭和一二年にかけて創作された未完の長編である。従来、本作は中島敦の他の作品の源として他作との関連性が多く論じられてきたが、本発表は、作品の構造と人物像に注目し、各人物の自己認識の分析を通して、中島敦の創作意識を明らかにするものである。


「夾竹桃の家の女」――中島敦に於ける女像と非植民地の方法論
  →(論題変更)中島敦「夾竹桃の家の女」論
  立命館大学大学院博士課程後期課程  ボヴァ エリオ   

 中島敦の「夾竹桃の家の女」は一九四一から四二年の南洋群島滞在期の経験から生まれた作品であり、単行本『南島譚』に収録されて一九四二年に初めて発表された。
 本発表では夾竹桃の家の女の登場人物と女の眼に向かい合う「私」の眼の意味に着目し作品の成立を探る。本作品ならびに「マリヤン」、または作者の文学活動初期の「プウルの側で」を取り上げて対比する形で考察したい。


◆ケンブリッジ大学図書館の和漢古典籍
   ―― 林&コーニツキー目録の再考 ――
  立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員  李 増先

 13世紀初頭に創建されたケンブリッジ大学(University of Cambridge)は英語圏において二番目の歴史を有する総合大学である。30以上のカレッジ(College)を擁し、100以上の図書館や資料館が置かれている。その中で最大な規模を有するのはケンブリッジ大学図書館(Cambridge University Library)である。本発表は現在同館の所蔵となったロックハート(Sir James Stewart Lockhart, 1858-1973)コレクションを手掛かりに、既刊『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』*1の再考し、ロックハートコレクションが同館の所蔵になるまでの経緯を明らかにする。

*1 Peter Kornicki, and Nozomu Hayashi. Early Japanese Books in Cambridge University Library: A Catalogue of the Aston, Sotow and Von Siebold Collections. Cambridge University press, 1991.

第148回研究例会のお知らせ(2016年9月11日(日)13:00~) 

第148回研究例会を下記の日程にて開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

 日 時:9月11日(日)13:00~
 会 場:清心館 3階 533教室
 参加費:無 料

  ***** 題目・要旨 *****

◆多和田葉子『献灯使』論―震災後風景の文学表象―
  立命館大学大学院博士課程前期課程  金 昇渊

 多和田葉子『献灯使』(講談社、二〇一四・一〇)は、「鎖国」という状況、隠蔽された「沖縄」という空間を通じて、放射性物質による「汚染」から露顕する「戦争―貧困―移民(難民)」などの問題を描く。
 本発表では、『献灯使』を介し、「震災」―とりわけ地震・津波といった「自然災害」による「被災(者)」を作り出す言説―にとどまらない風景を読み解く。その上、多和田本人やその作品に顕著である移動の問題が、震災以降の「読み」においてどのように捉えなおされ、読み直されるかを考察する。


◆物語叙述における二重原因構造による動因付けの役割―若紫巻と若菜上下巻を中心に
  立命館大学大学院博士課程後期課程  テレサ・マルティネス・フェルナンデス

 『源氏物語』の叙述技法の一つである「二重原因構造による動因付け」は全作品にわたって「状況説明的叙述」と「演劇型叙述」の二つに分類できる。
 作者はあることを語る時に、目的叙述に至るまで、その前に他の事柄を説明し、別の人物を登場させる。このことを先行研究は、文中挿入句、又は所謂語りの延長、「待たせぶり」(玉上氏)と理解してきた。本発表では、このような事例が殆ど動因付けの構造として解釈できることを明らかにする。


◆芥川龍之介「南京の基督」論―中国古典文学との比較を視野に
  立命館大学大学院博士課程後期課程  周 倩   

 「南京の基督」は1920年7月号の『中央公論』に発表された。作品は二つの物語から構成され、一つは私娼金花の梅毒が「基督」に治された「奇跡」の物語で、もう一つは「日本人旅行者」が知っている「真実」の物語である。
 本発表では、先行研究に見逃された中国古典艶情小説との比較を通して、芥川が本作品を創作する際中国文学から素材を求めたことを明らかにする。また、加えて、同時期の中国を素材とした作品群も参照しながら、芥川の創作意図を考察する。


◆貴船神社の和歌史
  立命館大学非常勤講師  三浦 俊介

 京都市左京区の貴船神社は和泉式部の和歌「物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る」で有名であるが、その詞書に出てくる「御手洗川」の位置さえ定かでない。今回の発表では、①平安中期の『増基法師集』所収歌、②平安後期の貴船社歌合の新出歌の検証、③貴船神社関連の歌徳説話、④貴船神社藏『貴船社人舌氏秘書』所収歌、⑤國學院大學図書館藏『木船谷者所持記』所収歌などを取り上げ、貴船神社の和歌史の一端を探りたい。