第137回研究例会のお知らせ 

12月9日(日)、第137回研究例会を下記の日程にて開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

日 時: 12月9日(日) 13:00~17:00
場 所: 立命館大学衣笠キャンパス 研心館4F 642教室
参加費: 無料

***** 題目・要旨*****

「安部公房「洪水」論――権力のありかを中心に――」
    立命館大学日本文学専攻3回生 岩本知恵
 1950年に雑誌「人間」において『三つの寓話』の一篇として発表された『洪水』は、それのみを扱った先行論が極めて少ない作品である。また、変身譚としての言及や、作者自身の当時の思想と歴史的背景を根拠とした上での共産主義的な思想の表出した小説としての読まれ方が主流であり、「新聞」等の作品内の詳細な諸要素に注視したものはほとんどない。今回はそのような諸要素に注目し、「権力のありか」を中心に言及したい。

「夏目漱石「彼岸過迄」論――須永市蔵を中心に――」
    立命館大学大学院博士後期課程2回生 深町博史
 小説「彼岸過迄」(「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」、明治45年1月2日~4月29日)では、田川敬太郎の「冒険」が短篇連作形式で展開されるが、作品の後半ではその友人須永市蔵が中心化されてゆく。先行研究において須永は「行人」の長野一郎、「心」の「先生」の原型的人物として位置づけられ、悩める知識人としての側面が注目される傾向にあった。しかし、本発表では複雑に形象された須永の人物像を分析した上で作品を考察したい。 


「梅崎春生「虹」論――<堕落>という問題を中心に――」
    立命館大学大学院博士前期課程1回生 森祐香里
 梅崎春生の「虹」は、坂口安吾「堕落論」をはじめ、敗戦を契機に道徳意識の変革が叫ばれた状況を踏まえ執筆・発表された作品である。
 自らを「女を知らない」・「書けない」小説家と称した(「男兄弟」)梅崎だが、本作は「花子」と名づけられた女性が〈パンパン〉となる過程を、男性の視点から描いた作品である。本発表では、女性を描くことによって浮き彫りとなる問題について、敗戦直後における女性を巡る言説に着目しながら考察していく。


「李良枝「かずきめ」論――身体に表れる問題をめぐって――」
    名古屋大学大学院博士前期課程1回生 森谷仁美
 「かずきめ」は1983年に発表された李良枝の第二作目である。本作品では「在日朝鮮人」である主人公の苦悩が、家族、「日本人」、性などの問題と複雑に絡みあって描かれている。
 本発表では、身体を通して表れる「在日朝鮮人」であることと、「女性」であることの二重の問題性に着目する。そして、それらの問題と絡めながら、これまでの先行論ではあまり触れられなかった、結末部分に登場する「少年」の存在について新たな考察を行う。


「正宗白鳥とキリスト教」
    花園大学・京都橘大学非常勤講師 伊藤典文
 思春期と学生時代を敬虔なクリスチャンとして生きた白鳥だが、文学的出発と同時に棄教し、神をも冒瀆するような激しい言辞で権威に屈しないスタイルで作家・批評家としての基盤を築いた。しかし、彼は生涯、聖書を傍らから離さなかったばかりか、〈知〉と〈信〉をめぐる葛藤や煩悶を生涯のテーマとしてきた。人生を生きるとは何か(死とはなにか)を探す旅の行程が〈書くこと〉であったとすれば、白鳥の文学は求道のメソッドとも言える。キリストに近づきつつ離れ、離れつつ近づくという、懐疑を抱きつつ生きたその姿は、ほんとうの信仰とは何か、を提示しているのではないか。いくつかの作品からそれらを問いかけてみたい。